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Vol.3 天龍寺(購入ページサンプル)
臨済宗天龍寺派の大本山である天龍寺。
1339年、後醍醐天皇の菩提を弔うために、室町幕府を開いた足利尊氏が、名僧・夢窓疎石(むそうそせき)を開山に迎えて創建した禅寺です。
その歴史的・文化的価値から、1994年には世界遺産「古都京都の文化財」の一つとして登録されています。
【見どころ】
1. 韋駄天像|スーパーアスリートがお出迎え
本堂正面に安置されている韋駄天像は、禅宗寺院に多く見られる守護神像の一つである。
韋駄天は仏教において、食物を守護し、台所(庫裏)に祀られることが多い神であり、食の安全や豊かさを願う信仰対象とされてきた。
「御馳走(ごちそう)」という言葉は、韋駄天に由来するといわれる。
伝説によれば、韋駄天が各地を駆け巡り、お釈迦様のために食べ物を集めたことに由来し、 そこから「食事を用意してくれた人への感謝」を表す言葉として定着したと伝えられている。
また別の逸話として、鬼に盗まれたお釈迦様の歯を韋駄天が俊足で取り返したという説もあり、そこから「韋駄天走り」の語源となった。以降、韋駄天は足の速い神として知られ、盗難除けの守護神としても信仰を集めている。
2. 雲龍の襖絵|古のトリックアート
昭和32年に制作された天龍寺の襖絵「雲龍図」は、画家・物外道人(もつがいどうじん)によって描かれた作品である。
物外道人は、「最後の文人画家」と称される富岡鉄斎の唯一の孫弟子として知られる。
この図に描かれた龍は、仏教において八部衆の一つとされる守護神であり、古来より水の神として信仰されてきた。
そのため、火除けの願いを込めて、寺院の天井や襖にしばしば描かれる。
襖絵の龍には、日本画特有の「逆遠近法」という技法が用いられており、見る角度や歩く方向によって顔の長さが変化して見えるという視覚効果が仕掛けられている。
これは遠近感を意図的に操作したもので、いわば古来のトリックアートともいえる。
また、龍の爪の本数にも意味がある。
中国では、爪の数が身分の象徴とされ、皇帝は5本、貴族は4本、庶民は3本の龍を用いた。
一方、日本では「天・地・海」の三界を表す3本爪が縁起の良いものとされ、好まれて描かれている。
さらに龍にまつわる逸話として、「逆鱗(げきりん)」の伝説がある。
龍のあごの下にある逆向きの鱗は、触れると龍が激しく怒るとされ、そこから「目上の人を怒らせること」を意味する「逆鱗に触れる」という言葉が生まれた。
3. 曹源池庭園|五感でととのう、お庭時間
天龍寺の本堂前に広がる「曹源池庭園(そうげんちていえん)」は、約4,000㎡の池泉回遊式庭園で、嵐山や亀山を背景に取り入れた雄大な景観を特徴とします。
この庭は、開山・夢窓国師が池の泥をさらえた際に「曹源一滴」と記された石碑が現れたことから、その名が付けられました。
日本で最初に「特別名勝」に指定された名園であり、本来は坐禅をしながら自然と向き合う場として設計されたものです。
池は大海を象徴し、庭全体に禅の思想や仏教的世界観が反映されています。
庭内には、白砂と松の緑が映える州浜、古典水墨画を思わせる奇岩、三段の滝「龍門瀑」、日本最古級の石橋、「釈迦三尊石」などが巧みに配置され、見どころに富みます。
また「登竜門」の伝説にちなんだ滝石組もあり、試練と成長を象徴する空間としても知られています。
4. 勅使門|閉ざされし扉の格式
大方丈の正面に位置する「勅使門(ちょくしもん)」は、天皇や皇族の来訪時にのみ開かれる特別な門である。
普段は閉ざされたままであり、その静けさに格式の高さを感じさせる。
この門は、日本の伝統的な門形式「四脚門(しきゃくもん)」に分類される。
2本の主柱の前後に控え柱を加え、計6本の柱で構成されるこの様式は、古くから寺社や武家屋敷などの正門に用いられてきた。
屋根は「切妻造(きりづまづくり)」の三角屋根で、現在は銅板葺き。
上部の構造は複雑で、桃山時代の建築に見られる力強さと華やかさを備えている。
この門は、もともと京都御所にあった内裏門であったと伝えられており、1641年に天龍寺へ下賜されたという記録が残されている。
5. ご本尊|飾らない、心のよりどころ
天龍寺本堂の中心に安置されているのは、平安時代に造られた釈迦如来坐像で、国の重要文化財に指定されている。
高さは約85cm、素材にはヒノキが用いられ、複数の木材を組み合わせる伝統技法「寄木造り(よせぎづくり)」によって制作されている。
内部は空洞化する「内ぐり」という技法が施され、軽量化と保存性を高める工夫がなされている。
像の表面には、わずかに金箔や漆の痕跡が残り、かつては金色に輝いていたことがうかがえる。
ふっくらとした丸みを帯びた顔立ちには、仏像特有の「白毫(びゃくごう)」が額に表現され、知恵と慈悲の象徴とされるその姿は、静かでやさしい平安仏の特徴をよく伝えている。
目の部分には、「彫眼(ちょうがん)」と呼ばれる技法が使われている。
これは目を彫って表現するもので、平安時代後期によく見られた様式である。
釈迦如来のご真言 「ノウマク サンマンダ ボダナン バク」